新型コロナウイルス感染症の影響で、自粛生活が続いています。
5月12日以降、一部解除になった地域もありますが、自粛要請が続いている地域も少なくありません。
先の見えない自粛生活での不安や思ったようにやりたいことができない不満も高まっている時期だと思います。不安や不満の高まりから、攻撃的になってしまい、その矛先が感染者や医療従事者といった、一番つらい立場にある方に向けられがちになっているという報道もしばしば目にします。
自粛生活というのは、東洋医学でいう陰陽の“陰”の部分だなぁと最近感じています。
陰陽というとなじみがないかもしれません。東洋医学は、天神合一思想、陰陽学説(陰陽論)、五行学説(五行論)をベースにしています。
陰陽学説とは、古代中国の哲学理論で、あらゆる事柄を陰(日陰)と陽(日なた)という対立する概念に分類して、相互作用や移り変わりなどを見立てていきます。
一般的に暗い、寒冷的、下降的、内向的、静的なものは陰にふりわけられ、明るい、温熱的、上昇的、外交的、動的なものは陽にふりわけられます。
たとえば、男性は陽、女性は陰とふりわけられます(不本意ながら!)。しかし、この陰陽は常に一定というわけではありません。たとえば、陽とされている男性も、活動的なとき(陽)もあれば、静かなとき(陰)もあります。そういったとき、前者は「陽中の陽」後者を「陽中の陰」と呼びます。同じように女性も活動的なとき(陽)もあれば、静かなとき(陰)もあるので、同じように前者を「陰中の陽」、後者を「陰中の陰」と呼びます。このように、陰陽というのは常に固定されているわけではありません。
また、昼と夜が移り変わったり、季節が移り変わるように、陰陽は一定のリズムで変化しています。陰陽というのは、移り変わりながらバランスを保ちます。
そういうと、陰陽半分ずつあることがちょうどいいバランスなのかな?と思われそうですが、「陰陽半分ずつの状態をキープしている」というイメージはちょっとちがいます。
コップに入っているきれいな水をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。いくらきれいな水でも、コップに入れたままではきれいな状態を保つことは難しいです。しかし、川の流れのように絶えず循環していることできれいな状態を保つことはできます。このように、陰陽半分ずつの状態をずっとキープするというのではなく、あるときは陰が強まり、あるときは陽が強まるといった循環を繰り返すことでちょうどよいバランスを保つというイメージの方が近いかと思います。
最近、化粧品のCMで、お肌は、日中は紫外線などから守り、夜はうるおいをためる働きがあると言っているのを耳にして、陰陽の考え方に近いな、と思いました。状況の変化に合わせて、陰陽それぞれが強まったり弱まったりしながら、その時々でベストな状態に近づけるというイメージでしょうか。
今の時期を陰陽に当てはめていくと、まさに陰の時期に当てはまるかと思います。「やりたいことが思うようにできない時期」ととらえてしまうと不安や不満が高まりますが、「やがてくる活躍の時期に向けた充電期間」ととらえると、少し前向きになれそうです。
今、やりたいことは何だろう?
今はできないけど、できるようになったときのために準備できることはないかな?
自分に問いかけてみることでこの自粛期間を有意義に過ごすことができるかもしれません。制約の多い今でもできることや、今だからこそできることが見つかれば、それに向けて前向きにとりくめそうです。
やりたいことが思い浮かばないという場合は、これまで自分がやっていて楽しかったことや好きなこと、得意なことなどポジティブな気持ちになれることをふりかえりつつ、これからどんなことをやってみたいか見つめなおすには、この自粛期間がいい機会になるかもしれません。
そして、自粛生活が明けた際には「やりたいことができる」ことに感謝しつつとりくんでいきたいものです。