an ordinary miracle

連日、新型肺炎、コロナウイルスが報道されています。

亡くなった方もいるので、1日も早くこの病気が解明され、治療が確立されることを祈ります。

新型肺炎の影響で、学校が休校になるなど、非日常的な日々が続いています。また、マスクが品薄になったことを発端に、消毒薬、トイレットペーパー、ティッシュ、はては米や水まで品薄になる騒動が続き、是非はともあれ、この騒動から感じたことは、潜在的な不安の強さと、「対処している」という手ごたえや安心感を求める人が多いのかもしれないということです。

この病気自体がまだ解明できていないこともあり、予防法や治療法が分からないので不安が高まります。そして、高まった不安を鎮めるために、「問題に対処している」という手ごたえを欲し、「対処をしているから大丈夫」といった安心感を得ようとしているのではないでしょうか?

しかし、今のところ挙げられている対処法は、手洗い・うがい・栄養・休養・規則的な生活といった当たり前のことばかりなので、「対処をしているから大丈夫」といった安心感が得られにくいのかもしれません。

トイレットペーパーなどの物を「買い占める」ということは、目に見えることでもあるため、「対処をしているから大丈夫」という安心感につながりやすいのかもしれません。

以前、精神科の病院でうつの入院患者さん達と接していたときのことが思い出されます。

経過については個人差がありますが、うつの程度が重いほど、入院直後、1日中寝ているという状態になります。少し回復して、まだまだ休養が必要だけれども、少し動けるようになってくると、病気の改善のために何かしたいという気持ちになります。意欲がわいてくるのはいいことですが、まだまだ休養が必要な時期に動いてしまうと、せっかく休養してとり戻してきたこころのエネルギーが、あっという間に底をついてしまうという時期でもあります。

骨折のイメージによく例えていましたが、骨折して、骨がくっつくまでは安静が必要です。ある程度骨がくっついてくると、見た目には腫れも引き、治ったようにみえますが、まだ完全にくっついていないため、動きすぎてしまうと、せっかくくっついてきた骨が離れてしまい、治りにくくなるのと同じように、まだまだ動き回る時期ではないことを説明したものです。

不安が強いと、その不安を打ち消すために何らかの対処をしたくなります。それは不安を自分でコントロールしようとしていることでもあり、自律にもつながることなので、とても大事なことです。

しかし、物事には、コントロールできることもあれば、コントロールできないこともあります。コントロールできないことへの対処としては、慌てず状況を良く見定め、必要なタイミングで効果的に動くことです。

前述のうつの患者さん達も病気が治らないのではないかという不安や焦りの強さから何か対処することによって、回復しているといった手ごたえや安心感を得たかったことでもあると思います。

病気の回復に必要なことは、タイミングをみながら適度なリハビリをすることです。タイミングをみずにリハビリをしてしまうと、かえって回復が遅れてしまいます。しかし、この「タイミングをみる」ということは非常に難しいことでもあります。

魚釣りのイメージに近いでしょうか?

あまり詳しくはありませんが、多くの釣りのやり方は、魚が食いつくまでは、釣竿の状態をよく観察し、魚がかかったところで一気に引き上げるというイメージだと思います。魚がかかるまでに竿を動かしてしまうと、せっかく食いつきそうになった魚を逃してしまいます。それと同じように、いいタイミングがくるのを「観察しながら待つ」ということが大事だと思います。

しかし、「待つ」というのは、「対処している」といった手ごたえに欠ける行為でもあります。根本的な解決方法ではなくとも、トイレットペーパーを買い占める方が、目に見える形で対処しているという手ごたえが得られます。

このような事態のとき、効果的な対処をするためには、気持ちを静め、冷静な状況判断ができることが必要です。気持ちを静めるためにトイレットペーパーを買い占めるの一つの方法ですが、もう少し建設的な方法を選びたいものです。

以前ご紹介した、マインドフルネスを行ってみるのもいいかもしれません。

そして、当たり前と思っていた日常が実は様々な奇跡によって支えられていたのかもしれないと考えると、感謝の気持ちもわいてきます。そして、いつもの日常が戻ったとき、以前よりも満たされた気持ちで過ごせるかもしれません。

今回の騒動で、一番カッコいいと思ったのは、イオン東雲店です。「トイレットペーパーが最後の一巻きまできた」というネットの書き込みに、「イオンに行けばある」と回答している人が多くいました。顧客に安心してもらおうと、様々な工夫をしてトイレットペーパーの特設会場を設け、「お一人様10点まで」と、買い占めなくても大丈夫、いつもの日常がある、といった安心感を与えてくれるイオン東雲店の姿勢と行動力は見習いたいものです。

当たり前に花が咲くことも、ちいさな奇跡かもしれません
当たり前の日々に、感謝

今回のタイトル、an ordinary miracle は、検索すると sarah mclachlan の曲が出てきますが、それが発売されるよりずっと前、アコーディオンとギターのかわいい女の子デュオ、nelories の1993年の曲からとりました。ご存じの方、マニアック同志ですね(笑)