現代人の生活習慣病(首・肩こり、目の疲れ)

最近お会いする患者さんの多くに共通する症状として、首・肩こりや目の疲れがあって、ひどくなると頭痛がすることもある。原因として思い当たるのは、デスクワークの仕事でパソコンを見たり、スマホを見る機会が多いこと。足のむくみもひどい、もしくは、自覚はないけど、整体やマッサージに行くとむくんでいるとよく言われる。

こういった症状が自分もあると感じる方は多いのではないでしょうか?これは、現代人の生活習慣病のようなものなのかも、と感じています。

現代生活では、デスクワークやパソコン作業といった頭脳労働が中心になります。そういった状態が続くと、からだの上の方にエネルギーが集中しやすく、そこにエネルギーがたまったままの状態が続き、首肩こり、目の症状につながっていると東洋医学では考えます。

首肩こりがメインの症状だから、そこだけを治療すれば治るのでは?と考える方も多いと思います。私も東洋医学を学ぶまではそうでした。

この症状は目・首・肩といった症状が現れている場所だけが悪いのではなく、たまったエネルギーが流れていかないということが一番の問題です。エネルギーは熱を持つことが多く、熱のこもった状態が続くことで痛みなどの症状につながりやすいと東洋医学では考えます。

からだというのは、本来、めぐりが良く、余分なものがあっても、流れが良ければ、どこかにたまることなく流れていきます。めぐりが悪くなると、余分なものを流すことができずに、たまってしまうため、さらにめぐりが悪くなるという悪循環に陥ってしまいます。

では、めぐりをよくするにはどうしたらいいか?ということですが、簡単なことです。

からだを動かせばよいのです。

デスクワーク中心の生活では、どうしても歩く機会が少なく、熱を冷ます働きを持つ水分が下の方に停滞したままになるため、体の上部にたまった熱をうまく冷ますことができません。足に水分が停滞したままになるため、むくみという症状になります。

これは、温かいものは上にたまりやすく、冷たいものは下にたまりやすいためです。今の時期、エアコンをつけると、上半身はのぼせるくらい温かくなっても、足元は冷えることがよくあります。これと同じ状態です。快適な温度にするためには、どうしたらよいか?扇風機などを使って、上下の温度をかき混ぜると温度差のムラがなくなります。それと同じイメージです。

この”上下に分かれた温度をかき混ぜる”ということをからだに置き換えると、からだのめぐりを良くして、上下に分かれたものをかき混ぜるということになります。からだを動かすことで上下に分かれてたまっていたものが流れ出し、症状の原因となっていたものが流されることで、症状が和らぎます。また、からだのめぐりが良くなることで、余分なものがたまりにくいからだになり、症状が現れにくいからだづくりにもつながります。

からだを動かすといっても特別な運動をするのではなく、1日8,000歩程度歩くだけでも違うと思います。電車通勤をしている方は乗り換えなどで歩く歩数も合わせると、そう難しい数字ではないかもしれません。いきなり毎日8,000歩は難しいかもしれないので、まず万歩計をつけてみて、自分が1日何歩歩いているのかをつかみます。最近では、スマホのアプリでも万歩計があるので、そういったものを活用するのもいいかもしれません。そこから1週間ごとに1,000歩(時間で約10分程度、距離で600~700ⅿ)ずつ増やした歩数を毎日歩くようにした方がとりくみやすいと思います。

ただ、そういった時間をとることも難しい場合、簡単にできることとして、深呼吸をしたり、座ったまま前後に10回ずつ肩を回したり、座ったまま、つま先立ちのようにして足のかかとを上げたり、逆にかかとをつけたままつま先を上にあげるといった簡単なことでもだいぶ違うと思います。深呼吸することで、自律神経の働きが整い、緊張が緩和されたり筋肉がゆるむことから、からだのめぐりを良くすることにつながります。肩回しや足の簡単な運動も、大きな筋肉を動かすことができるので、血流の改善にもつながると思います。1時間ごとにタイマーをセットして、やってみるのもいいかもしれません。この方法は以前ご紹介した「ねこ先生トト・ノエルに教わるゆるゆる健康法」に載っているので、詳しいやり方などはそちらを一読してみてもいいかもしれません。習慣づけるのは難しかもしれませんが、 はじめは、気付いたときにやってみるというゆるいペースでじゅうぶんだと思います。

ただ、どうしても忙しい日々を過ごしていると、わかっちゃいるけど…と感じる方も多いと思います。そんな場合には、鍼灸治療の力を借りるというのも一つだと思います。

鍼灸治療では首・肩こり、目の疲れにも、からだのめぐりを良くするための全身治療を行います。からだは本来、不調があっても自分で治せる力を持っています。めぐりが悪くなると、この自分で治せる力の働きが弱まり、余分なものを流せなくなるため、症状が現れます。症状の出ている場所だけの治療では、一時的に症状は改善しますが、根本的なめぐりの悪さは改善されていないため、すぐに不要なものが溜まってきて、症状が再発しやすいです。そのため、からだのめぐりを整えるといった治療がとても重要になります。もちろん、からだのめぐりを良くする治療だけでは、すぐにたまったものが流れていくわけではないので、めぐりが良くなっても、症状が改善するまでタイムラグが生じることもあります。その間も症状は辛いため、症状の出ている場所の治療も行いつつ、からだのめぐりを整えるという両輪の治療を重視しています。

症状やからだの状態に意識を向けながら、そろそろきそう…というタイミングでの治療がおすすめです。自分のからだの状態がわからないという場合は、負担のない間隔で定期的にからだのメンテナンスとしての鍼灸治療を取り入れることで、からだに対する意識やからだそのものも変わってくると思います。